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不動産ファンドのデューデリジェンスとは?プロが徹底解説!

金融機関のプロはどのようにデューデリジェンスを行っているのか大公開!

不動産ファンドの内容について、詳しく分析・検証を行う「デューデリジェンス」。今回は、国内金融機関で年間1兆円規模の不動産ファンドのデューデリジェンスを行っているHALさんに、プロがどのような観点から不動産ファンドのデューデリジェンスを行っているのか解説していただきました。

【関連記事】不動産ファンドとは?仕組みやメリット・デメリットなどを詳しく解説

プロの行うデューデリジェンスがわかる

不動産ファンドは少額から投資可能で、プロの運用会社が運用してくれるため事務負担もなく、非常に魅力的な投資商品のひとつです。

一方、ファンドの運用を全て運用会社が行うからこそ、投資後に「こんなハズじゃなかった」と後悔しないように、事前にしっかりと内容を確認する必要があります。

不動産ファンドの内容について、詳しく分析・検証を行うことをデューデリジェンスといいますが、不動産ファンドに馴染みのない方は、どのようにデューデリジェンスを行えば良いのか検討がつかないのではないでしょうか。

そこで当記事では、国内金融機関で年間1兆円規模の不動産ファンドのデューデリジェンスを行っている筆者が、プロがどのような観点から不動産ファンドのデューデリジェンスを行っているのか、詳しく解説していきたいと思います。

不動産ファンドのデューデリジェンスとは

「デューデリジェンス」とは金融業界ではよく使用される言葉で、日本語では「適正評価手続き」といわれます。

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デューデリジェンスは不動産以外にも、株式投資やM&Aの世界でも実施されており、簡単にいうと「本当に投資(購入)する価値があるのか?」ということを詳しく検証することを指します。

つまり、不動産ファンドのデューデリジェンスとは、投資するか否かを決定するために「本当に投資する価値のある不動産ファンドなのか?」を検証する非常に大切な行為であるといえます。

それでは、不動産ファンドのデューデリジェンスはどのような観点で行えばよいのか、詳しく見ていきましょう。

不動産ファンドの要素

不動産ファンドのデューデリジェンスでは、不動産ファンドを以下のような要素に分解して検証を行います。

①運用戦略
②ポートフォリオ
③レバレッジ戦略
④目標リターンとその実現性
⑤運用会社の実績と体制
⑥解約時のペナルティ

それでは、各項目について詳しく見ていきましょう。

①運用戦略

運用戦略とは、ファンドの目的はなにか、その達成に向けてどのような運用を目指すかを示したものです。

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もう少し細かくいうと、ファンドがどのようなポートフォリオを構成し、どのような成長シナリオを描き、どのようなリターンの実現を目指すか、ということです。

投資しようと思っているファンドがそもそも自分の望む運用戦略をとっていなければ、期待する運用結果を得られることはありません。

ですので、まず運用戦略が自分の意向に沿ったものであるかを検証することが大切です。運用戦略の検証にあたっては、以下のような観点から行います。

(1)インカムゲイン(賃料収入)を重視するか、キャピタルゲイン(売却益)を重視するか

インカムゲインを重視するファンドの方が、一般的に安定した運用が行われます。

キャピタルゲインを重視するファンドは、築古物件の改装や、完全空家へのテナント付けなどによる価値向上を狙うので、インカムゲインを重視するファンドよりもハイリスク・ハイリターンの運用となる傾向にあります。

(2)物件固定型か、物件追加型か

物件固定型とは、投資時に取得予定物件として提示された物件以外取得しないファンドのことをいいます。

物件固定型のファンドは、将来のリスク・リターンが見通しやすいという利点がある一方、将来的なファンドの規模・収益力の成長が見込めないというデメリットもあります。

物件追加型とは、投資時に取得予定物件として提示された物件以外にも、運用戦略に沿って物件を取得していくファンドをいいます。

物件追加型のファンドは、ファンドの規模や収益力の成長が期待できる利点がある一方、運用会社の裁量によって物件取得が行われるため、投資家が望まない物件取得が行われる可能性があるというデメリットもあります。

(3)ポートフォリオは総合型か、用途特化型か

ポートフォリオとは、ファンドが保有する不動産の組合せのことをいいます。

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総合型のポートフォリオとは、投資対象を特定の用途に限定せず、オフィス・住宅・商業施設・物流施設・ホテルなど幅広い用途の不動産に投資するファンドのことをいいます。

総合型のポートフォリオは用途分散が図られており、用途特化型よりも安定性の高いファンドであるといえます。

用途特化型のポートフォリオとは、物流施設のみを投資対象としたり、ホテルのみを投資対象としたりと、特定の用途の不動産にのみ投資するファンドをいいます。

用途特化型のポートフォリオは、その用途の市場環境が良好な場合には非常に高いパフォーマンスを発揮します。

逆に、その用途の市場環境が芳しくない場合には、ファンドのパフォーマンスは大きく落ち込むことになります。

例えば、ホテル特化型の不動産ファンドは2017年〜2019年は非常に良いパフォーマンスを発揮していましたが、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大によりホテルは休業を余儀なくされ、パフォーマンスは足元大きく落ち込んでいます。

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(4)運用期間は何年を想定しているか不動産ファンドは運用期間が設けられていないファンドと、運用期間が設けられているファンドがあります。

運用期間が設けられていないファンドの代表例はJ-REITです。

運用期間が設けられていないファンドは基本的に投資家の望むタイミングで投資口を売却して投資を終了することができます。

一方、運用期間が設けられているファンドは運用期間中は解約禁止だったり、期間中の解約にはペナルティが課せられたりします。

投資をするに当たっては、皆さんが想定している時間軸で問題なく投資を終了できるファンドであるか確認をしておくことが大切です。

②ポートフォリオ

ポートフォリオとは、ファンドが保有する不動産の組み合わせのことをいいます。

ポートフォリオはファンドの収益源となるため、しっかりと分析する必要があります。

ポートフォリオを分析するに当たっては、以下のような観点が重要です。

(1)運用戦略に合致したポートフォリオが構成されているか

ファンドがどんなに望ましい運用戦略を掲げていても、ポートフォリオがイマイチであればその運用戦略は実現しません。ですので、ファンドの運用戦略とポートフォリオが合致しているか、必ず確認するようにしましょう。

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例えば、ファンドが「中長期的に安定したインカムゲインを狙う」という運用戦略を掲げているのにも関わらず、ポートフォリオが都心から外れた空室も多いアパートばかりで構成されていれば、戦略通りの運用を行うことは難しそうだという判断になります。

(2)用途やエリアなど、分散の利いたポートフォリオが構成されているか

ファンドが複数物件を保有している場合、その用途(オフィス、住宅など)やエリア(首都圏、関西圏など)は分散されている方がリスクが小さくなり、望ましいポートフォリオと判断できます。

(3)ポートフォリオを構成している不動産は、中長期的に競争力を有しているか

ファンドが投資期間中に安定した収益を獲得するためには、保有する不動産が投資期間中にしっかり稼働してくれることが大切です。

不動産がしっかり稼働する力を「競争力」といいますが、ポートフォリオを構成している不動産が投資期間中に競争力を維持出来る物件であるかの見極めが重要です。

競争力を維持出来る物件であるかの見極めについては、以下の観点から判断します。

  • 底堅い賃貸需要が見込まれるエリアにあるか(駅距離、繁華性、嫌悪施設の有無など)
  • 周辺の不動産と比較して、著しく築古であったり設備が劣っていたりしないか
  • 過去の稼働状況を見て、安定して高稼働を維持している物件であるか

③レバレッジ戦略

(1)レバレッジとは

レバレッジとは英語で「てこ」の意味をいい、投資の世界では借入金の活用により資金効率を高めることレバレッジ効果といいます。

不動産ファンドでは、投資家の出資金(エクイティ)と金融機関からの借入金(デット)とを合わせた資金で不動産投資を行うのが一般的です。

借入金の割合が多ければ多いほどレバレッジ効果は高くなります。

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一方、借入金が多いと金利負担が多く、不動産の価格が下がってしまった場合に出資金が毀損する可能性も大きくなります。

そのため、借入金が多ければ多いほどリスクも高くなる点、注意が必要です。

(2)LTV

借入金の安全度を図る指標として「LTV(Loan to Value)」というものがあります。

LTVは不動産の評価額に占める借入金の割合であり、プロの世界ではファンドの安全性検証のため必ず確認される重要な指標です。

LTVの数値は低いほど「安全性は高いがレバレッジ効果は低い」ファンドとなり、LTVの数値が高いほど「レバレッジ効果は高いが安全性が低い」ファンドとなります。

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一般的に、LTVは以下のような水準の範囲に設定されます。

☑不動産投資信託(REIT): 35〜45%程度
☑私募不動産ファンド:50~70%程度

上記よりも高いLTVが設定されているファンドは、リスクが高い運用が行われるファンドであるという認識を持つのが良いでしょう。

なお、昔はLTVが80%を超えるファンドもありましたが、2007年以降の金融危機時に破綻してしまったファンドも多くあったため、現在はLTVは低め(50%前後)に設定される傾向にあります。

④目標リターンとその実現性

不動産ファンドには、通常目標リターンが設定されています。

投資家は目標リターンを見て不動産ファンドへの投資を決定しますが、そのファンドが必ずしも目標リターンを実現するとは限りません。

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投資対象の不動産が長期間空室になってしまったり、不動産市況が悪化して不動産価格が下がってしまう可能性もあります。

そのため、運用会社の想定を鵜呑みにせず、自分で目標リターンの実現可能性を検証することが重要です。

リターンにはインカムゲイン(賃料収入)とキャピタルゲイン(売却益)があり、それぞれ以下の項目について検証します。

(1)インカムゲイン

・賃料の設定は適切か

運用会社が想定する物件の賃料が、周辺相場と比べて違和感のない水準であるか確認することが必要です。

もし運用会社の想定する物件の賃料が、周辺相場と比べてかなり高い水準にある場合には、周辺相場なみの賃料に修正した場合のインカムゲインの数値を確認しましょう。

・入居率の設定は適切か

空室率とは、 建物全体の賃貸可能面積に対して何%空室部分があるかを表した数値です。

通常、運用シナリオでは常に満室稼働を想定することはなく、概ね5~10%程度の空室率を想定します。

運用会社のシナリオが著しく低い空室率を設定している場合には、5~10%程度の空室率に修正した場合のインカムゲインの数値も確認するようにしましょう。

・経費率の設定は適切か

経費率とは、賃料収入に対して運営経費が何%を占めるのかを表した数値です。

用途にもよりますが、概ね20~30%程度の経費率が設定されることが一般的です。

運用会社のシナリオが著しく低い経費率を設定している場合には、20~30%程度の経費率に修正した場合のインカムゲインの数値も確認するようにしましょう。

(2)キャピタルゲイン

・取得価格は適切か

ファンドが取得する予定の物件の取得価格が、相場の価格と比較して高い水準にないか確認しましょう。

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(相場よりも低い価格で買えるのであれば、お買い得ということなので問題ありません。)

不動産価格は、以下の式で計算されます。

不動産価格=(家賃収入-運用経費)÷還元利回り

この(家賃収入-運用経費)をNOI(Net Operating Income/運営純収益)といいます。

不動産投資で頻繁に出てくる言葉なので、覚えておくと便利です。

還元利回りとは、その不動産の持つ収益性を表す率のことをいい、キャップレートとも言われます。

還元利回りの設定は非常に大切で、不動産価格はNOIを還元利回りで割り戻した数値となるため、還元利回りが低ければ低いほど不動産価格は高くなります。

以下のような還元利回りの事例や動向が記載されたサイトから、取得対象となる不動産の還元利回りが適切に設定されているかを、しっかりと確認するようにしましょう。

【参考】
株式会社ICHI キャップレートマップ
一般財団法人日本不動産研究所 不動産投資家調査

・売却価格は適切か

投資期間が定められている不動産ファンドの場合、最終的には物件を売却して資金を回収することになります。

ですので、最終的な売却価格は不動産ファンドのパフォーマンスに大きな影響を与えます。

この売却価格が相場よりも高い価格が想定されていないか、必ず確認するようにしましょう。

価格の検証の仕方は、取得価格の検証と同様で、「NOIの想定が適正か」、「還元利回りの設定が適正か」の2点で検証するようにしましょう。

なお、リスクシナリオとして不動産価格が何%まで下がったら出資金が回収できなくなるかを検証することも大切です。

⑤運用会社の実績と体制

不動産ファンドを実際に運用するのは運用会社であり、運用会社の能力でファンドのパフォーマンスが左右されると言っても過言ではありません。

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そのため、ファンドが投資する不動産のことだけではなく、運用会社の検証も必須になります。

運用会社の検証については、以下のような観点から行いましょう。

(1)必要な許認可を取得しているか

不動産ファンドの種類により、必要な許認可は変わります。

・不動産特定共同事業によるファンドの場合
→「不動産特定共同事業法」による不動産特定共同事業社としての認可が必要

・不動産投資信託(REIT)によるファンドの場合
→「金融商品取引法」に基づく金融商品取引業者(投資運用業)の登録が必要

無免許の運用会社であった場合、 ある日突然取り締まられてファンドの運用がストップしてしまう事態にもなり兼ねませんので、ちゃんと許認可を取得した運用会社であるかは必ず確認しましょう。

(2)運用実績のある運用会社であるか

運用会社が過去に運用したファンドの運用実績の確認も重要です。

過去運用したファンドの実績が豊富でかつパフォーマンスも良好であれば、運用能力に大きな懸念はないと判断することができます。

(3)組織体制、人員体制は適切か

運用会社の組織体制として、ファンドを運用する専門部隊が作られているか、その専門部隊に十分な人数が属しているか、運用担当者はファンド運用の実績を十分に有しているかなどを確認しましょう。

ファンドの運用体制が脆弱な会社である場合、投資後のアフターフォロー(運用状況の説明や質疑対応など)をしっかりとして貰えない可能性もありますので、こちらも非常に重要なポントです。

⑥解約時のペナルティ

不動産ファンドによっては投資期間中に解約できない、あるいは期間内解約には違約金(解約手数料)が発生するものがあります。

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特に運用期間が定められているファンドには、投資家都合による途中解約が制限されているものが多いため、その制限の内容は必ず確認しましょう。

急遽資金が必要になった時に、スムーズに解約できるように準備しておくことも、需要なリスク管理のひとつです。

まとめ

不動産ファンド投資の成功は、不動産ファンドの選定に大きく左右されます。

そのため、投資前にしっかりとファンドの内容を分析・検証することが大切です。

ファンドの内容を見た上で、よく分からない物には投資しないという判断も必要なります。

不動産ファンド投資を考えている方は、当記事に記載されている事項を参考に、是非ファンドデューデリジェンスにぜひ取り組んでみてください。


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Profile

ライター
HAL

不動産鑑定士。証券アナリスト。国内金融機関で不動産コンサルティング、ファンドマネジメント業務に約10年間従事。個人でも不動産投資を行っており、都内複数物件の運用を行っている。


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