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隆範

巨木の枝から地球を眺める集合住宅「L’Arbre Blanc」

人気連載・世界一周建築旅行記第4弾

2020年は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大によって、生活様式や価値観など様々なものが一変しました。特に、長時間滞在することになった「住まい」に関して考え方を変えた方も多いのではないでしょうか。今回は、このような状況下でも安全に気持ちよく暮らせるフランスの集合住宅「L’Arbre Blanc(ラルブル・ブラン)」をテーマに、今春世界一周建築旅行から帰国した現役大学生ライター・隆範さんが考えをつづります。

【第一回】地球一周建築旅を通して見えてきた、日常の中にある“旅”
【第二回】彫刻の意思を感じる、ラ・クンジュンタ―彫刻の家―
【第三回】破壊と再生が刻まれる、古代ローマのポルティコ

モンペリエに立つ白色の巨木

私がフランスにいた2019年のクリスマスシーズンは、大規模なストライキの真っ只中で、リヨンからモンペリエへと向かう便が欠航していました。予定より一日遅れながらもこの街を訪れたかったのは、ある建築に泊まれるという噂を聞いていたからです。

モンペリエはフランスの南、地中海にほど近い温暖な気候の土地です。この地に建てられた「L’Arbre Blanc」という集合住宅が今回紹介する建築です。直訳すると「白い木」ですが、日本では通称「モンペリエの集合住宅」と呼ばれています。2025年に開催予定の国際博覧会(大阪・関西万博)で、会場デザインプロデューサーに選ばれたことでも話題の建築家、藤本壮介さんの設計です。ホテルではないものの、Airbnbという民泊アプリを使うことで泊まれるお部屋がありました。

写真を見れば、その特徴は一目で分かると思います。

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外に向かって飛び出ているのは、それぞれの部屋から伸びるバルコニーです。多くの集合住宅は、建物の高さや駅からの近さを競ったり、床面積や遮音性などの内側ばかり注目されたりするものですが、L’Arbre Blancは「バルコニーの広さ」という新しい価値を創造しているのが見てとれますね。

ストライキで遅い時間の到着となったので、僕が最初に目にしたL’Arbre Blancは、車窓からだんだん見えてくる夜の姿でした。それはどこか日本の原風景のひとつとも言える、光を浴びた夜桜を思い出すような、幻想的な光景でした。

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新たな形に翻訳されたライフスタイル

モンペリエの人々は、温暖な気候によって庭やカフェテラスなどで過ごす時間が長いと言われていて、それは冬でも屋外でランチを食べるほどです。

日本の集合住宅では、ジメジメとした狭いバルコニーがつけられているものが多いですが、L’Arbre Blancはモンペリエの土地で暮らす人々のライフスタイルを、広いバルコニーという形に翻訳して上に積み上げていったときに、木のような形で具現化したものだと感じました。

庭と住宅の関係性は非常に長く、古来より世界の殆どの住宅に庭があります。庭が誕生した文脈には、自然界の植生を人為的に刈り取って、自らのテリトリーとして監視できるようにすることがありますが、欧州に於いても、庭を所有して管理することが生活の中で一つのステータスになります。私が宿泊した部屋のホストの方も、バルコニーに入れたオリーブの植木を誇らしげに紹介してくれました。

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L’Arbre Blancは集合住宅といっても、住戸だけではなくレストランや屋上テラスもありました。夜にフラっとお酒を飲みに行けるって、ちょっとした贅沢ですよね。

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さて、住戸は部屋ごとに違いはあるものの、どの部屋も窓を開け放つと張り出したバルコニーから部屋の中まで一続きにつながって、開放感の中で時を過ごせます。

この内側から外に向かって投げ出される感覚は、映画の中で見るような西洋宮殿のバルコニーへの憧れにも感じられますし、身近なところで言えば、京都・清水の舞台にあるような空間からの開放感に近いものにも感じられました。

住宅は外界から身を守るシェルターの役割を持ちながらも、人は常に外界への憧れがあるのではないでしょうか。

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地球を自覚する

新型コロナウイルス感染症が世界中に広がって、気軽に外出ができなくなってしまった2020年。

世界でも日本でも、家の中で引きこもる日々が続いています。多くの気密性の高い集合住宅に住む人々は、何日も部屋の中で生活するのが息苦しいものだという事実に直面しました。空調の効いた建物の中がいくら快適であっても、人間という生き物は外界の空気の中に身を置くことを求めます。

そういった意味で、テラスごとにソーシャルディスタンスがとれたこの集合住宅は、コロナと共に生きていく社会の中で最適な答えとなっていました。大きなバルコニーとそこそこの広さの部屋があれば良い。

モンペリエの温暖な気候から生まれた庭での過ごし方を、集合住宅のバルコニーへと変換させたこの建築は、結果的にコロナ禍においても住宅の可能性を革新的に広げる提案となったのです。

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人類は土地固有の気候の中で暮らしているうちに、その気候の特性を建築を媒介にして振舞いへと変えていきました。しかしながら、近代から建物の性能を上げていくことによって、ほとんど完全な、世界中どこでも建てられるシェルターを完成させてしまいました。

そんな中で、建築家は土地から建築を考えることで、人から気候までの異なるスケールを設計によって繋ぐことができる存在です。

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建築から未来の地球を考える

僕はいくつかの国を渡り歩きながら、地球をぐるりと回って建築を見てきました。それぞれの国の人たちは、どんな気候を持っていたとしてもポジティブにライフスタイルに取り入れていました。

きっと人間は地球が好きなんだと思う。

たとえ近い未来に、人類が地表面に住めなくなったとしても、人は地球を忘れないでしょう。地球の環境を見つめて、地球に住む意志を持って暮らしたい。

未来の地球を追い出されてしまった人類の無念は、今、感じ取らなければ遅いのですから。

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Profile


隆範(りゅうはん)

1998年愛知県生まれ。18歳で僧侶となり、建築学に打ち込む。茶道と建築を合わせたワークショップ『アーキテク茶会』や、プログラミングを使った禅と映像のインスタレーション『上善若水』、キビタキとシジュウカラの為の『100の巣箱』など、建築の可能性を探求した幅広い制作を行う。日本建築学会主催『建築学生サミット2018秋』や、中部地方最大の建築学生団体『NAGOYA Archi Fes2019』を主導し、現在は地方都市のまちづくりを提案するチーム『まにまに』を率いている。


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