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伊藤将人

スキマな視点で地元を旅する~マイクロツーリズムで注目の「これからの観光のカタチ」~

「スキマ旅」の魅力を考える

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、3密を控えるよう求められている中、2020年7月からGo To Travelキャンペーンが始まりました。「観光」は張り詰めた重苦しいコロナ禍の日常から一時的に非日常を楽しめる手段です。ただ、中々遠方への旅は……という人がいるのも事実。そこで今回は、長野県で「信州のスキマを好きで埋める」をコンセプトに「スキマ旅」の魅力をウェブメディアなどで発信するSkima信州 (スキマ シンシュウ)代表の山本麻綾さんに、地方移住研究者・伊藤将人さんがインタビュー。地元を旅する楽しさや「スキマ旅」の魅力、これからの時代の観光の在り方について山本さんに語って頂きました。

マイクロツーリズムで注目された「地元旅」

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Withコロナ時代の観光形態として、星野リゾート代表取締役社長の星野佳路さんが提唱し拡がりつつある「マイクロツーリズム」。

マイクロツーリズムとは、自宅から1時間の移動圏内の「地元」で観光する近距離旅行の形態を指します。新型コロナウイルスによって訪日観光客によるインバウンド消費や、遠距離を大人数で移動するようなマスツーリズム的観光が難しくなったいま、国内観光産業を回復させるための方法として、マイクロツーリズム=地元旅が注目されているのです。

星野リゾートが提唱したこともあり「新しい観光のカタチだ!」と注目を集めるマイクロツーリズムですが、コロナ前からマイクロツーリズムに似た狙いや形態の観光は存在していました。それらは「ミニマムツーリズム」や「スモールツーリズム」あるいは「ショートトリップ」といった呼称で、主に自治体やDMO(Destination Management Organization / 観光物件、自然、食、芸術・芸能、風習、風俗など当該地域にある観光資源に精通し、地域と協同して観光地域作りを行う法人のこと)によって実施されてきました。

地元を旅する「スキマ旅」の特徴は「視点」

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「Skima信州」のサイトより。

マイクロツーリズムが提唱される数年前から、長野県を主なフィールドに地元を旅する観光「スキマ旅」を推進してきた団体「Skima信州」

代表の山本麻綾さんは大学進学と同時に長野県に移り住みました。出版社や観光ライターを経て、現在はフリーランスで自治体の観光PRやアドバイザリーを務めながらWebサイト「Skima信州」を運営しています。

伊藤将人(以下、伊藤):山本さんは数年前から「スキマ旅」を提唱し、Webサイトでの観光情報発信や事業者・自治体と連携してスキマ旅を推進していますが、そもそもスキマ旅とはどういったものを指すのでしょうか?

山本麻綾さん(以下、山本):スキマ旅は、どこに行くのか、どのくらい移動するのかよりも「訪れた先で何をするのか」「何を目的に旅するのか」「自分は何が好きなのか」を大事にする観光スタイルです。

その中でも、特に「一般的に有名な観光地」や「人気な観光地ではない場所」を楽しむのがスキマ旅です。「需要のあるなしではなく、地域を巡り“好き”を楽しむ観光を」そんな思いからスキマ旅について、Webメディアで発信しています。

長野県池田町での双体道祖神ツアー下見のために池田町を訪れた際の1枚。山本さんの周りに立っているのは百体観音と呼ばれる石仏群
長野県池田町での双体道祖神ツアー下見のために池田町を訪れた際の1枚。山本さんの周りに立っているのは百体観音と呼ばれる石仏群

伊藤:山本さんが「スキマ旅」を推し進め、発信していこうと思ったのはどうしてですか?

山本:観光ライターとして活動していたとき、『みんなに需要がありそうな場所を取り上げてください』という指示をよく受けました。ただ、自分の興味関心は『みんなに需要のありそうな場所』とは少し違うし、同じように、一般的に人気なものや有名な場所以外が好きな人もたくさんいると思っていました。

みんなが好きかは分からないけど、確実に好きなコアなファンがいるものや場所を発信することで、1人1人に深く届く観光スポットや紹介記事になるのではないかと思い、Twitterでそのことについて呟いたら思った以上に反響がありました。それがライターをやめて自分でメディアを作ったキッカケです。

伊藤:「スキマ」という言葉を選んだのはどうしてですか?

山本:スキマには「モノとモノの間」という意味があります。定番や人気のスキマである普段気がつきにくいところ、一見してもわからないこと、前提知識を持っていないと楽しめないこと、好きじゃないとみえてこないもの、そういうものが旅をおもしろくすると思ったからスキマと名付けました。

歴史を知ったり実際に地域を歩いたりすることで、『どうしてこんな場所に石造があるんだろう?』と、その土地の文化や歴史・隠れていたものがみえてきたりします。そういうものを目的に出かけると、距離に関係なく近所や地元でもおもしろい旅ができます。スキマ旅はいつもと違う視点=「スキマな視点」をもつことが鍵なんです。

伊藤:星野リゾートが「地元を旅する」マイクロツーリズムを提唱する前から、山本さんは地元を旅することの楽しさを発信したんですね。マイクロツーリズムの文脈では距離だけが注目されがちですが、実は本質はそこではなく「視点」なのだという主張はとても興味深く、多くの人が見落としている点ですね。

地元を旅する「スキマ旅」を実践する

長野県池田町滝沢地区 双体道祖神
長野県池田町滝沢地区 双体道祖神

伊藤:山本さんが推進する「スキマ旅」とは、具体的にどのようなものが当てはまるのでしょうか?

山本:Skima信州で紹介しているものとして、双体道祖神という石造があります。専門家へのインタビューをキッカケに長野県に8,000基の双体道祖神があると知ったのですが、それまではちゃんと見たことはありませんでした。私は、その方へのインタビューをキッカケに知識を得たことで、これまでと同じように地域を歩いていても双体道祖神に目線がいくようになり気になりだしました。つまり「双体道祖神を見られるスキマな視点」が出てきたんです。

これをきっかけに、2年前には長野県池田町で地域団体と共催で「双体道祖神ツアー」も開催しました。町内からの参加者は普段とは違う視点で地域をみることで新たな発見がありました。また県内外から来たコアなファンは双体道祖神をキッカケに池田町を訪れましたが、ツアーに参加することで絶景や地域グルメなど他の魅力が知れました。

いつもと違う視点で地域をみてみることで、違った旅ができます。旅には非日常感が必要です。観光の定義は「生活圏外に出て移動して非日常感を味合うこと」だと言われてますが、生活圏内であっても非日常感さえあれば楽しめます。じゃあ、一体どうすれば地元で非日常感が味わえるのか。その答えがスキマな視点で地域をみることだと思います。視点を変えることで日常の景色の中に非日常的なものが見えてくるんです。

双体道祖神については、Skima信州のこちらの記事をご覧ください。

自治体・事業者が地元を旅する観光を推進するうえで大切なこと

長野県池田町で実施した双体道祖神ツアーの一コマ。この坂をのぼると次の写真の景色が見える。

伊藤:コロナをキッカケにスキマ旅を実践したいと考えている自治体や事業者も多いと思います。自治体や事業者がスキマ旅をコンテンツとして押し出していく上で、大切なことはなんでしょうか?

山本:Skima信州と連携してスキマ旅を推進したいというお声がけは最近とても多いです。スキマ旅を推進する際に大切なのは、自分たちがもっている限られた資源をどう魅力的に映すか、どう発信するかです。

普通は『ただ地元を旅してください!』と言われても、どうしたらいいかわからないですよね。旅を楽しむ視点を教えてあげたり、もともと自分たちが持つ資源が好きな人にこちらから届けることが大切です。

Skima信州はニッチな地域資源を扱っていますが、実は25歳~35歳の若者層がメイン読者です。双体道祖神ツアーも大学生~30歳代の若者世代が参加者の半数以上でした。『若者はゲームやアニメが好きだろう』と決めつけず、若い人にスキマな視点でアプローチするのはポイントです。

例えばスキマな地元のコンテンツに温泉やヘルスツーリズムをプラスしたツアーを提供することで、視点だけでは動かないものも動く可能性があります。勝手に需要を決めつけないことがスキマ旅が成功するための鍵になると思います。

また、スキマ旅を推進するうえで「地元の人が当たり前すぎて気付かない魅力」を前面に出すことも大切です。『こんなの誰も好きじゃないよね』と地元の人が言ってしまうと、せっかくのファンも来てくれません。どんなものにも『これが絶対に好き』という層は必ずいるので、地元の隠れた魅力に敬意を払って発信することで成功につながります。

地元を旅する観光はニュースタンダードとなっていくのか

伊藤:最後に、コロナ禍に注目を集めるスキマ旅やマイクロツーリズムは、今後どのような受容のされ方をしていくと思いますか?また次の展開としてどんなカタチが考えられますか?

山本:スキマ旅は、それぞれの地元や親しんだ地域で非日常を楽しむので、オーバーツーリズムの心配がありません。これはコロナ禍の状況にとても合っていると思います。マイクロツーリズムなどが注目されたことで、これを機にいつもの旅から一歩深く踏み込んだ観光をし始めている層もいます。

「地元を旅する」ブームが今後も続くかはわかりませんが、これからの観光を担う若い層は幅広い観光を楽しむようになってきているので、今後もいま以上に地元を旅するようになってくれたらと思います。Skima信州はそのお手伝いをしていきたいですね。これを機に有名観光地だけでなく、ちょっとしたときに県内の質の良い旅館に泊るとか、地元をスキマ旅してみるとか、そんな風に選択肢が増えたらいいなと思います。

◇◇◇

「スキマ旅」やマイクロツーリズムに代表される、遠方に赴くのではなく地元を独自の視点で楽しむ観光形態はWithコロナ時代のニュースタンダードとして注目され始めています。しかしSkima信州代表・山本さんへのインタビューから、新型コロナウイルスと関係なく時代や社会の変化が、これらの観光形態を生み出し人々に求められていることがわかりました。

それは地方自治体が観光で元気になる1つの方法かもしれませんし、子どもからお年寄りまで地域を学び愛着をもつ地域教育の1つになるかもしれません。また地元を旅する観光形態は移動が少なくなることで環境負荷も減ります。これはSDGsの理念ともマッチした時代の要請にも沿っています。

1人1人が「好き」と「視点」を大切に地元を旅する観光が、コロナ禍のブームで終わることなく新しい観光の楽しみ方として拡がっていくことに期待です。





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Profile

まちづくりライター
伊藤将人

1996年長野県生まれ。一橋大学社会学研究科にて地方移住と観光に関する研究を行いながら、KAYAKURA代表として長野県内外で観光インバウンド・移住・まちづくりのコーディネート・調査・PRを手がける。訪日観光客向けWebサイトNAGANO TRIP、地域考察WebメディアKAYAKURA運営。週刊SPAや公益社団法人 日本観光振興協会発行『観光とまちづくり』など執筆多数。東京都国立市と長野県の2拠点居住中。

<参考資料>



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