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亀梨奈美

空き家の売却は「思い」と「現実」の最適化を試される

不動産のプロが、空き家売却の経験を紹介

京町家を一棟貸しの宿泊施設に、鎌倉の古民家を全国どこでも住み放題の定額制多拠点コリビング(Co-living)サービス「ADDress」の拠点に――。

クラウドリアルティではこれまで、空き家の利活用につながるプロジェクトを実施してきました。年々増加する空き家の再生・利活用を促すことは重要です。しかし、個人で気軽にできるかと言えば……。そこで今回は、空き家売却の経験のある不動産ライター・亀梨奈美さんに、「プロの目で見た、空き家活用の現実」をご寄稿いただきました。

目次

日本の空き家率は13.6%

直近の調査によれば、日本の空き家率は13.6%にまで上昇しています。とくに空き家率が高いのは、山梨(21.3%)、和歌山(20.3%)、長野(19.5%)。中部地方や四国、九州の一部は、継続的に空き家率が高い地域です。(参考:総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査」)

(出典:総務省統計局

私の祖父母は長野県安曇野市に住んでおり、逝去後、自宅は空き家に。親族一同の苦渋の決断によって、空き家を売却したという経験があります。

思い出が詰まった空き家を売却するという選択

祖父母宅で2つ上の兄と。祖父は元警察署長。ちょっと強面でしたが、私たち孫にはとても優しかったです

「おじいちゃんとおばあちゃんが死んだら、この家はみんなの別荘にすればいいだ」

生前、祖父母はよく私たちにこう言っていました。

当時の私は、祖父母の死やその後のことなど想像できるはずもなく、「そうだね」とか「わかった」とか、気のない返事をしていたように思います。

1990年12月祖父母宅の庭で。雪のない季節は、庭の畑で野菜を育てていました

長野県安曇野市は、綺麗な水とおいしい野菜にお蕎麦、広がる田園風景と澄み切った空気が魅力の街。近年では、観光客も見られるようになりました。子どもの頃は、夏休み、春休み、年末年始……と、1年のうち1/4ほどは祖父母の家で過ごしていたので、私にとっては第二の故郷ともいえる場所です。

空き家を所有し続けるという「現実」

祖父母が亡くなって少し経った頃、母から「おばあちゃんち売ることにしたよ」と伝えられました。すでに不動産会社に相談済みということで、売値は土地・建物含めて100万円ほど。築年数は20年を超えていたので家屋には価値がつかず、車がなければ生活できないこの土地では、周辺相場を考えれば決して安すぎる金額ではありません。さらに当時、20歳そこそこで不動産会社に就職したばかりだった私は、固定資産税などの負担が続くことも理解はしていました。でも、「どうして?」「100万円なんてもったいない!」と激しく抵抗したことを覚えています。私たちにとってのこの家の価値は、100万円なんかでは絶対ない、と。

思えば、祖父母が高齢になって老人ホームに入ってからは、月に1度は母や伯父が祖父母宅を訪れていました。それは、祖父母が亡くなってからも同じでした。

長野県安曇野市は、冬には氷点下10度を下回ることもあります。長期間水を流さなければ水道管が凍結してしまうので、防止のため寒くなる前には水道管の冬支度をしなくてはなりません。また、周囲にお住まいの方もどんどん少なくなっていたので、防犯面でも心配が。さらに、100㎡ほどの庭もまた、定期的に手入れしなければお隣や道路への越境が危惧される状況だったのです。

いとこ4人で、いつも家の中や近所を走り回っていました

私たちは都内に住んでいたので、安曇野までは車で3~4時間ほど。母たちは、定期的に安曇野に通うのも限界だったのでしょう。そして、私を含めた4人の孫たちは、みんな20代前半。昔のように、家族や親族が祖父母宅に集うこともなくなっていました。

「思い出が詰まった家を残したい」という気持ちは、私のみならず、母も伯父も他の家族も当然ながら思っていたことでしょう。しかし「現実」を考えれば、空き家を手放すことしかできなかったのです。

空き家の法律と税金控除制度

「不動産を所有していると固定資産税がかかる」ということはご存じでしょう。これは、人が住まない空き家でも例外ではありません。ただ、住宅が建っている土地については「住宅用地の特例」が適用となり、課税額が以下表のように引き下がります。

小規模住宅用地(200㎡以下)固定資産税が1/6(都市計画税は1/3)
一般住宅用地(200㎡超)固定資産税が1/3(都市計画税は2/3)

しかし、2015年に施行された「空き家対策特別措置法」(正式名称:空家等対策の推進に関する特別措置法)により、空き家はこの「住宅用地の特例」の適用がなくなってしまう可能性が出てきています。

空き家対策特別措置法

「空き家対策特別措置法」は、空き家にかかわる法律として初めて施行されました。目的は、空き家対策の推進。空き家の数そのものもそうですが、管理不全の空き家の増加を食い止めることが、この法律の大きな目的です。管理が行き届かない空き家は、老朽化のスピードが早まり、保安上、衛生上、景観上、保全上、周囲に深刻な被害をもたらします。

空き家対策特別措置法では、それまで行政機関でもなかなかできなかった空き家への立入調査や、空き家の所有者等の調査を可能にしています。さらには、所有者に対して、空き家管理に対する助言や指導、勧告、命令をおこない、最終的には空き家の強制撤去も可能に。そして、指導などの過程では、先述した「住宅用地の特例」が撤廃されます。つまり、住宅(空き家)が建っている状態であっても土地の固定資産税が優遇されなくなり、結果として、課税額が跳ね上がる可能性があるということです。

所有者に迫られるのは空き家の適正管理

空き家対策特別措置法によって、全ての空き家で固定資産税の優遇が撤廃されるわけではありません。撤廃のタイミングは、管理不全と判断され、再三の行政指導に従わなかったとき。つまり、空き家の管理に気を付けてさえいれば、多くの場合、固定資産税が跳ね上がることは防げるのです。

とはいえ、管理に気を付けるといっても、それは容易なことではありません。とくに、私の祖父母宅のように今の住まいから遠方にあったり、寒冷地にあったりする空き家は、適正な管理をするとすれば所有者の大きな負担となります。最近では、空き家管理サービスなどもよく目にしますが、管理を委託するとなれば今度は相応の金銭負担が生じます。

相続した空き家売却にかかる税制優遇

空き家の流通を促進する狙いで施行された制度として、空き家売却時の税制優遇もあげられます。従来までは、マイホームを売却したときにしか適用とならなかった「譲渡所得の3,000万円特別控除」が、今では相続した一部の空き家も対象となっています。

この場合の「譲渡所得」とは、簡単にいえば不動産を売ったときの利益のこと。売却した不動産の所有期間が5年以下(売却した年の1月1日時点)の場合には39.63%、5年超の場合には、15.315%の税率で譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)が課税されます。相続空き家の3,000万円特別控除が適用となれば、譲渡所得が3,000万円まで譲渡所得税は課税されません(適用要件の詳細については、国税庁HPをご覧ください)。つまり、税金の面では従来よりも空き家は売却しやすくなっているということです。

空き家活用の現実

空き家対策特別措置法の施行をうけ、所有者は、空き家の適正管理が「義務」になったともいえるでしょう。しかし、ただ空き家を空き家のままにして管理するだけでは、管理費用や物理的な負担ばかりがかかってしまいます。そこで今、注目されているのが、下記のような空き家を活用したビジネスです。

  • 賃貸
  • 更地にして土地活用
  • 空き家カフェ
  • 民泊
  • シェアハウス
  • コワーキングスペース

「管理にお金や負担をかけるなら事業をしてしまおう」という試みですね。たしかに、第三者に貸し出すとなれば、管理費や維持費をまかなう以上の収益が得られる可能性もあります。

空き家活用の難しさ

空き家活用は、いわば「投資」です。空き家をそのままの状態で活用できる事例は少なく、賃貸住宅や店舗として貸し出すにも、民泊などの宿泊施設にするとしても、リフォーム費用などの初期投資がかかります。

不動産投資する上で求められることは、やはり立地の良さ。残念ながら、需要のないところでは収益化は見込めません。空き家活用の成功例は多くありますが、どれもその地域での需要を調査し、地域にあった活用を見出した結果です。観光地、学校周辺、駅前……など、用途や属性は違えど、誰かしらがなんらかのかたちで「その物件を利用したい」と思う立地であることが、空き家活用においても不可欠になるわけです。さらに、その地域の条例や制限により、店舗経営などができないケースもあります。

今になって、「祖父母宅はなにか活用ができたのかな」と考えることがありますが、正直、難しかっただろうと思います。

安曇野は水やお蕎麦が有名なので「知名度」はあるものの、休日であっても人が殺到するような場所ではありません。

白馬や上高地、松本など近郊の有名観光地からは少し距離があるので、宿泊施設としても店舗としても、需要は見込めなかったことでしょう。そして、今思うのです。思い出の家を宿泊施設にしたり、活用のためにリフォームや解体したりするくらいだったら、売って良かったのかもしれないなと。祖父母宅を買ってくださった方は、家を取り壊すこともなく、リフォームすることもなく、そのままの状態で住みたいと言ってくださいました。そのまま空き家にしておいて、誰も寄り付かない家になるより、うまくいくかわからない活用をしてみるより、売却して誰かに住んでもらうことも空き家活用の1つの選択肢なのです。

空き家活用ビジネスの拡大

人口が減りつつある地方ではとくに、空き家を上手に活用して収益化することは簡単なことではありません。しかしそんな中、地方の空き家活用を「ビジネス」とする企業が増加傾向にあります。たとえば、クラウドリアルティで出資を募った「ADDress」を展開する株式会社アドレスも、空き家活用ビジネスで急成長している企業の1つです。

参考記事:都市と地方で人口をシェア。空き家活用ビジネスで急拡大する“ADDress”誕生の裏側

ADDressのように、1つの空き家ではなく“複数の空き家を拠点にできる”という、シェアハウスでも民泊でもない新しいサービスが、今の時代に合致しているということの表れなのでしょう。言い換えれば、個人で地方の空き家を活用するのはやはり難しいということなのです。

まとめ

「空き家を売却するのは悲しい」というお気持ちは、とてもよくわかります。しかし、空き家対策特別措置法が施行されてからは、さらに空き家所有者の負担は増しているといえます。そして、人口と世帯数減少が加速していくことが避けられない今の状況では、今後ますます空き家が手放しづらくなる可能性も否めません。

空き家を、必要としている人に“引き継ぐ”こともまた、その家を大事に思うからこそ。多くの空き家は、売却も活用も、儲けるためにするわけではないでしょう。自分たちの「思い」と「現実」と向き合い、どうすることが最適なのか、今一度考えてみてはいかがでしょうか。

Profile

不動産ライター
亀梨奈美

大手不動産会社退社後、不動産ライターとして独立。在籍時代は、都心部の支店を中心に契約書や各書面のチェック、監査業務に従事。プライベートでも複数の不動産売買歴あり。業界に携わって10年以上の経験を活かし、「わかりにくい不動産のことを初心者にもわかりやすく」をモットーに不動産記事を多数執筆。

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