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伊藤将人

行政×民間で行う空き家対策の未来

空き家問題解決の新たな手法「京都市モデル」を考察

地方だけでなく、首都圏でも問題になりつつある「空き家問題」。クラウドリアルティはその解決に資する資金調達を支援してきました。今回はそのひとつである【京町家再生・職住共存プロジェクト#001】を取り上げつつ、これからの空き家問題解決をどう考えるか、地方移住研究者・伊藤将人さんの考察です。

住宅はライフコースを通じて重要な生活基盤であり、OECD(経済協力開発機構)の調査によると、社会全体の幸福度にも影響するものです。これまでの日本の住宅政策は新しい住宅を建てることを奨励してきており、人々も新築住宅を好む傾向があります。このことから日本は持家に高い価値をおく「持家社会」だといえるでしょう。

しかしこのような人口増加を前提として来た戦後日本の住宅システム「持家志向」「新築志向」は、人口減少社会においてさまざまな困難に直面しています。そのひとつが「空き家問題」です。この記事では空き家問題を解決するための新たな手段として、「行政×民間」で行う空き家対策の新たなモデルを考えていきます。

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 空き家問題の現状

現代の日本社会では空き家が増加の一途をたどっています。2016年の住宅・土地統計調査によれば、全国の空き家数はおよそ846万戸(前回調査では約820万戸)。全住宅に占める空き家の割合は13.55%と、およそ7~8軒に1軒が空き家であることが明らかになりました。

空き家の増加にはさまざまな要因がありますが、そのひとつが中古市場における空き家流通の低調です。この背景には、空き家を知らない人に売ったり貸したりすることへの抵抗感や、使わなくなった家を中古市場に流通させるという発想が広がっていないことが挙げられます。

こうした状況を踏まえ、1990年代以降、地方自治体による空き家活用事業が積極的に行われてきました。空き家の把握~活用では民間事業者には難しいステップが存在するためです。

自治体の空き家活用システムは主に3種類に分けることができます。

①情報提供型:大半はこのタイプ。自治体が空き家調査を行い、賃貸の意志が得られた物件をリスト化し公開。問い合わせに対し情報提供する。

② 助成金型:昨今、増加中。空き家所有者に対し改修費などを一定の割合で助成する。

③借り上げ+助成金、借り上げ+民間資金:事例は少ないが今後増える見込み。

ここでは従来行われてきた①、②ではなく、昨今注目を集める③「借り上げ+助成金」とその2つの事例をみていきます。

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 島根県の空き家活用事業の事例

1つ目の事例は島根県の事例です。島根県で取組まれている空き家活用事業は、市町村が空き家を10年間所有者から借り上げ、県の外郭団体である ㈶ふるさと島根定住財団の改修費補助を受け、改修後に転入者の住まいとして活用する方式で、1997年に創設された県単独の事業制度です。

わかりやすく説明するために海士町の事例をみてみましょう。まず初めに町は広報で空き家募集を行い、所有者に貸出し意向があれば町と建築業者で空き家を調査し、改修可能な場合には、町と所有者間で使用貸借契約が結ばれます。

その後、町委託の建築業者により改修設計 ・ 工事が行われます。このとき改修費は町が負担し、改修後財団から改修費の半額 (上限250万円 , 離島300万円)が町に支給されます。

改修後、入居者の募集が行われ、入居者決定後に町と入居者の間で賃貸借契約が結ばれ、入居者から町に家賃が支払われます。町負担の改修費は10年間の契約期間中の家賃収入で回収する方式です。

このような島根県の空き家活用システムの特徴は、以下の3点に集約できます。

①自治体業務は、広報等による空き家情報の収集と希望者への情報提供が基本。

②「借り上げ」型を除き、契約は空き家所有者と入居者の直接契約。

③助成制度は貸主が対象で、貸主が改修費を負担して改修後に貸し出す方式で、家賃収入で改修費負担分を回収する仕組み。

この島根県の取組は1990年代後半から行われており、借り上げ+助成金パターンの先駆的事例だといえるでしょう。海士町などはこのシステムを用いることでUIターンの若者が近年、急増しており、空き家対策と移住促進という2つの目的を達成しつつあります。

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 京町家再生・職住共存プロジェクト

2つ目の事例は2021年に京都市からリリースされた「京町家賃貸モデル事業」です。この事業は「借り上げ+民間資金」の構造をもつ空き家活用システムです。

京都市では、京都らしい街並みの景観や京町家の保全継承に取り組んでいます。その一環として、京都市が京町家を所有者から借り上げ、活用事業者に転貸し、将来の担い手の育成等を行う「京町家賃貸モデル事業」を実施し始めました。

島根県の事例との相違点は以下の通りです。

①改修費負担の出所と管理者の違い:活用事業者がリノベーションや維持管理等を行う。

② 対象物件の違い:京都市の事例では1950年以前に京都市内に建てられた京町家が対象=活用だけでなく保全も目的となっている。

①の違いは、京都市の事例では活用事業者がリノベーションや維持管理等を行う必要があるため、一見すると普及が難しいようにみえます。しかしこの事業では、活用事業者のIzutsuRealty株式会社が、株式会社クラウドリアルティがサービスを提供する投資型クラウドファンディングを活用することで、工事費を調達します。

従来の島根県などの事例が行政主体のものであったのに対し、京町家再生・職住共存プロジェクトは、行政と民間による協働事業だといえるでしょう。

行政だけでは難しい維持管理やリノベーションを民間が行い、民間だけでは難しい信頼性ある借り上げを行政が行う。さらに、資金調達では別の民間事業者も協働する。このように複数の民間企業と行政が連携することで「借り上げ+民間資金」による空き家活用システムが成り立つのです。

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 行政×民間で行う空き家対策

以上、2つの事例でみてきたように「借り上げ+助成金」もしくは「借り上げ+民間資金」による空き家活用の事例は、昨今徐々にみられるようになってきています。この背景には従来の行政による「情報提供型」や「助成金型」だけでは、空き家の利活用に限界があることが挙げられます。

一方で島根県のような「借り上げ+助成金」モデルにも限界はあります。多くの地方自治体は人口減少に伴う税収減という課題をかかえており、自治体や外郭団体が多くの資金を捻出する必要があるモデルは中長期的にみると持続可能ではないかもしれません。

京町家再生・職住共存プロジェクトが提案する行政と民間の協働による「借り上げ+民間資金」という空き家活用モデルは、人口減少社会における新たなモデルだといえます。興味関心ある方は、ぜひこちらのページをご覧ください。


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Profile

まちづくりライター
伊藤将人

1996年長野県生まれ。一橋大学社会学研究科博士後期課程にて地方移住やまちづくりに関する研究を行いながら、KAYAKURA代表としてまちづくり・地方移住・観光・SDGs関連の事業企画や調査、PRなどを手がける。これからの地域・社会・観光を考えるWebメディアKAYAKURA運営。OggiやAERA、週刊SPAなど執筆多数。地方創生や地方移住の専門家として不定期でAbema Prime Newsにも出演。東京都国立市と長野県の2拠点居住中。


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